2018年09月03日
息子と私のネズミ事件③
(続き)
「もしかして、死んじゃってかわいそうだったから、ネズミを水から出してあげたの?」
手を洗っていた息子のところへ行ってそう言うと、振り返った息子の目には、あっという間に涙がたまった。
両手をぎゅっと強く握り、大きくうなづいたあと、ぽろぽろ涙を流した。絶対に泣くまいと、握った拳が震えていた。
そうだったんだね、ごめんね、と言って、私は息子を抱きしめた。
息子の気持ちを、もう少しで取りこぼすところだった。
危なかった。
本当に危なかった。
「ネズミさんが死んじゃってかわいそうだったね。
お母さん、ちゃんと土に埋めてお参りしたから大丈夫だよ。
助けてくれてありがとう。
でも、ネズミを手で触らないでね。
病気を持っているかもしれないんだよ。」
息子の眼を見て、ゆっくりこう言うと、ようやく息子の気持ちは落ち着いた。

素手でネズミに触れないでもらいたい私の気持ちは、きっと間違いではないはずだ。
一方で、かわいそうなネズミを、せめて水から引き揚げてあげようと思った息子の心は純粋で尊い。
どんな小さな生き物の死も粗末にしなかったのだから。
私はおとなとして、冷静に息子の気持ちを汲み取ってから説明すべきだったのだ。愚かなことに、私は自分の常識の中でものを見て、大きな声を出してしまった。
びっくりして固まってしまったあの表情と、ぎゅっと握って震えていた両手が、今でも頭に何度も浮かんでくる。
そして、いつも涙が出るのだ。
夫のあの一言がなければ、まったく気がつかなかった。
家族というのは本当にありがたい。
視点を変えて物事を見ると、日常は複雑だけれど豊かなものになる。
7歳の子どもの目線から見ると、今までとはまた違った景色が見えてくる。
こんな景色を大人になってから見ることができるなんて、今まで頑張ってきたご褒美をもらった気分だ。
おとなになるにつれて凝り固まった常識や概念を捨てて、私はもう一度、自由な感性を育てなおすことにしよう。
(おしまい)
「もしかして、死んじゃってかわいそうだったから、ネズミを水から出してあげたの?」
手を洗っていた息子のところへ行ってそう言うと、振り返った息子の目には、あっという間に涙がたまった。
両手をぎゅっと強く握り、大きくうなづいたあと、ぽろぽろ涙を流した。絶対に泣くまいと、握った拳が震えていた。
そうだったんだね、ごめんね、と言って、私は息子を抱きしめた。
息子の気持ちを、もう少しで取りこぼすところだった。
危なかった。
本当に危なかった。
「ネズミさんが死んじゃってかわいそうだったね。
お母さん、ちゃんと土に埋めてお参りしたから大丈夫だよ。
助けてくれてありがとう。
でも、ネズミを手で触らないでね。
病気を持っているかもしれないんだよ。」
息子の眼を見て、ゆっくりこう言うと、ようやく息子の気持ちは落ち着いた。

素手でネズミに触れないでもらいたい私の気持ちは、きっと間違いではないはずだ。
一方で、かわいそうなネズミを、せめて水から引き揚げてあげようと思った息子の心は純粋で尊い。
どんな小さな生き物の死も粗末にしなかったのだから。
私はおとなとして、冷静に息子の気持ちを汲み取ってから説明すべきだったのだ。愚かなことに、私は自分の常識の中でものを見て、大きな声を出してしまった。
びっくりして固まってしまったあの表情と、ぎゅっと握って震えていた両手が、今でも頭に何度も浮かんでくる。
そして、いつも涙が出るのだ。
夫のあの一言がなければ、まったく気がつかなかった。
家族というのは本当にありがたい。
視点を変えて物事を見ると、日常は複雑だけれど豊かなものになる。
7歳の子どもの目線から見ると、今までとはまた違った景色が見えてくる。
こんな景色を大人になってから見ることができるなんて、今まで頑張ってきたご褒美をもらった気分だ。
おとなになるにつれて凝り固まった常識や概念を捨てて、私はもう一度、自由な感性を育てなおすことにしよう。
(おしまい)
Posted by チョコチョコ at 09:27│Comments(4)
│なんてことない日常
この記事へのコメント
素敵なお話ですね。
息子さんの優しさもすごく伝わってくるし、でも母親の心配が先にくる気持ちもよくわかるし。
どんな小さい生き物でも命があって、その終わりをきちんと受け入れている息子さん。なんとかしてあげたいと水から出した気持ちはきっと大人になっても変わらないで持っててくれるでしょうね。
私もつい子供達の為!と思いだけが強く出て、ぶつかる事も多いので、見方や考え方が違うという事をもっと意識しなければ…と気づかされました。
息子さんの優しさもすごく伝わってくるし、でも母親の心配が先にくる気持ちもよくわかるし。
どんな小さい生き物でも命があって、その終わりをきちんと受け入れている息子さん。なんとかしてあげたいと水から出した気持ちはきっと大人になっても変わらないで持っててくれるでしょうね。
私もつい子供達の為!と思いだけが強く出て、ぶつかる事も多いので、見方や考え方が違うという事をもっと意識しなければ…と気づかされました。
Posted by ゆうゆうママ
at 2018年09月03日 21:47

>ゆうゆうママさん
ありがとうございます。
息子の気持ちを、まるでブルドーザーのようにどかして自分の言いたいことだけ喋ったという苦い思い出です。純粋な気持ちに触れてハッとしました。子どもの目線に立つのは難しいですが、戒めにしています(笑)私の剣幕がすごかったんですよ!
ありがとうございます。
息子の気持ちを、まるでブルドーザーのようにどかして自分の言いたいことだけ喋ったという苦い思い出です。純粋な気持ちに触れてハッとしました。子どもの目線に立つのは難しいですが、戒めにしています(笑)私の剣幕がすごかったんですよ!
Posted by チョコチョコ
at 2018年09月04日 10:06

こんにちは、良いお話ですね。
ふたりの娘を育て上げた親父です、
子育て中は色々と親子の葛藤がありました。
今思うと、親目線だけじゃなく子供の目線で判断すれば良かったと思う事もありました。
素敵な息子さんですね。
命の尊さ、それが亡骸になった時憐れに思う優しさが伝わってきます。
すくすくと元気に成長して欲しいですね。
先日はお世話様でした、
次回は是非息子君にお会いしたいです♪(笑)
ふたりの娘を育て上げた親父です、
子育て中は色々と親子の葛藤がありました。
今思うと、親目線だけじゃなく子供の目線で判断すれば良かったと思う事もありました。
素敵な息子さんですね。
命の尊さ、それが亡骸になった時憐れに思う優しさが伝わってきます。
すくすくと元気に成長して欲しいですね。
先日はお世話様でした、
次回は是非息子君にお会いしたいです♪(笑)
Posted by 楽天親父
at 2018年09月04日 11:26

>楽天親父さま
コメントありがとうございます!先日の奥さまとの仲睦まじい様子に、娘さんたちが愛情に包まれて育ったことが想像されます私は子どものまっすぐな気持ちに触れて、大事なことを思い出した気がします(^^)
照れ屋の息子ですが、ぜひ次回お会いできますように。
コメントありがとうございます!先日の奥さまとの仲睦まじい様子に、娘さんたちが愛情に包まれて育ったことが想像されます私は子どものまっすぐな気持ちに触れて、大事なことを思い出した気がします(^^)
照れ屋の息子ですが、ぜひ次回お会いできますように。
Posted by チョコチョコ
at 2018年09月04日 18:43
