ようこそ『寺嫁つれづれ日記』へ
今、總光寺ではお寺の中の表示や看板を整備しています。
拝観においでいただくお客様に、よりわかりやすくご案内するためです。
これは、漆塗りの板に亡くなった義父の筆文字を転写したものです。
実はこれ、カレンダーの裏に書いたものです。
3年前の行事のときに掲示を外して、そのままになっていたのです。
カレンダーの裏にさっと書いた文字にしては、夫も私も思い入れが深いものでした。
しかし大きなお寺の行事の混乱で、捨ててはいないものの所在がわからなくなっていたのです。
ところが!
思いもよらないところから出てきて、大事にとっておいたのでした。
めくってみると、カレンダーは1996年のもの。
なんと、もう20年近く前の字です!
境内の看板をはじめ、お寺の中の表示を整備することは、今年の私たちの目標でした。
總光寺のトータルデザインをお願いしている
Ricoさんに相談し、準備を進めているところでした。
お寺の雰囲気に馴染むものを、と高価ではありますが、漆ぬりの表示にしたのです。
実は、漆塗りの大きなこの板には、はじめ別の役割を持たせていたのです。
でも、毎日手で触って玄関先に掲げるには、漆塗りは繊細すぎるし、もし落として破損なんてことになったら
数々の試行錯誤と紆余曲折があり、この大きな板の使い道はゆっくり後ほど考えましょう、と一旦保留になったのでした。
そして数日後。
「お義父さんのあの文字を看板にするってどうだろう?」と思いついたのです。
なつかしいお義父さんの字。
ゆるり…、なかなか出てこないなんとも言えない味のある表現。
これをRicoさんに見ていただいたら、「
いいですね、そうしましょう!この文字を取り込んで、ここに写すことは可能です」と即決でした。
夫は、亡き父の文字を見て、感慨深い様子でした。
志半ばで病に倒れた父の、さり気なく遺した大きな何かを、これから半永久的に残すことができ、毎日見ることができます。
あまり自分の気持ちを言わない夫ですが、とてもとても喜んでいるのが手に取るようにわかりました。
ああ、本当によかった。
「はじめにうまく行かなかったのは、このお義父さんの字にたどり着くために用意されたものだったみたいですね」
Ricoさんと、今回の不思議な紆余曲折を振り返ったのでした。
まるで、この結果に導かれたような、本当に不思議な流れだったのです。
そして、この表現を英語に訳すのに苦労しました。
「庭園を見る前にお参りしてください」と、直訳はだめです。
宗教的な意図を含んで、手を合わせることを強制するつもりはないので、誤解を与えてしまうような表現を避けたかったのです。
結局、日本語と日本文化に理解があるネイティブの英語の先生に、この表現の意図を説明して訳していただいたのです。
直訳するとこんな感じでしょうか。
「庭園をご覧になる前のご都合のよろしい時に、どうぞ遠慮なく本尊である薬師如来に敬意を示していただいてけっこうです」
訳してくださった先生には、義父のこの繊細な表現を丁寧に英語にしていただき感謝申し上げます。
言葉は文化とリンクしているので、文化的背景を守りながら表現する大事さと難しさを再認識しました。
あああああ、やっぱり英語好きだなぁ!
教室が恋しいなぁ!
生徒のみんな、どうしてるかなぁ??
…と思っていたら、初めて担任したクラスの教え子(M穂)が、今日会いに来てくれました